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Claude備忘録

Claude(以下、クロード)とのやり取りで気づいたことを簡単にまとめる

知らない語を注釈なしで使う問題

コンポーネント設計の話をしていたときに、ある変更案についてクロードは「配管が増える」と言った。

別にこの単語自体は問題ないのだが、文脈の中で何を指しているのか分からず、読解が止まった。

どういう意図で使ったのか聞いてみると、「props で値を渡すには、値が通る途中のコンポーネント全部に『受け取って下に渡す』コードを書き足す必要がある」との返事があった。

これは日本語圏では「バケツリレー」、英語圏では prop drilling と呼ばれる。 一方の「配管」だが、これは英語圏で使われる plumbing の直訳かもしれない。

ここから推測したことは、「セッション内の背景情報を一語に持たせている」というもの。

問題は言葉の選び方よりも、その言葉が通じるとクロードが見なしていた点にあると考えられる。

次は調査中に知ったこと。

話し手が聞き手の知識を見積もって語を選ぶことを audience design と呼ぶ。†一

会話で同じ対象に繰り返し言及すると、話し手と聞き手は同じ言葉に収束する。「この対象をこう捉える」という提案を聞き手が受け入れて初めて「概念上の合意」に繋がる。†二

今回のケースは、先の合意が成立していない状態を、成立済みの状態として扱われてしまったことに問題があるといえる。

†一 Clark & Murphy, "Audience design in meaning and reference", 1982。
†二 Brennan & Clark, "Conceptual pacts and lexical choice in conversation", 1996。

出した指示

最初は「単語の背景を括弧書きで注釈すること」と指示していた。ただ「部品(デザインコンポーネント)」のような言い換えでは、語義を狭めるだけで何を指しているかは結局不明になることが多かった。

別セッションのクロードと調査中、その際に用語学の規格としてISO 704 †三 というものがあることを知った。この規格が定める定義の形(直上の上位概念と、隣接概念から区別する特徴)を借りて、指示を次の四つに変えた。

  • その分野に正式な名称がある語は、比喩ではなく正式な名称で書く(「配管」ではなく prop drilling)。初出には、元の文に置き換えて読める一文の説明を添える。
  • 正式な名称がない語を専門的な意味で使うときは、初出で二つを書く。直上の上位概念と、隣接する概念と区別する特徴(区別できる特徴に限る)。
  • 上の説明文は、元の文の語と置き換えて読めるか確かめる。循環した定義と、「〜ではない」だけの定義は不可。
  • 説明の前提を冒頭で明示する(例:ここでの説明は、コンポーネント間の props の受け渡しを前提にする)。

この指示だけを渡した別のクロードに「配管」を説明させると、次が返ってきた。

  • 正式な名称:prop drilling
  • 上位概念:コンポーネント間で値を受け渡すための props の記述
  • 区別する特徴:受け取ったコンポーネント自身はその値を使わず、下の子に渡すためだけに props を受けて引き渡している
  • 置換:「配管が増える」 ->「自分では使わない値を、下の子に渡すためだけに props で受けて引き渡す中間コンポーネントの記述が増える」

こうすることで、セッション内の用語を再度翻訳するような認知負荷がいくらか減ったように感じる。

†三 ISO 704(Terminology work — Principles and methods)。内包的定義を「直上の上位概念+区別特徴」と定め、循環定義を禁じ、否定だけの定義を不備とし、定義文が用語と置き換え可能であること(置換原則)を求めている。

まとめ

そもそも学習過程で長文が評価されたり、より専門家らしい振る舞いをすることが評価されている(らしい)。文法的メタファー†四というのも近しいとのこと。こちらはまた後で調べる予定。

†四 M・A・K・ハリデーが提唱した概念で、言語における文法的な表現を用いて異なる意味を伝える手法のこと。

(ここまで)